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古来よりセラミックスは日本画に代表される絵具の原料として使われていたが、溶射皮膜としてのセラミックスの色についてどのように表現してよいか技術的報告が見当たらない。
千年を経ても色褪せることなく、今に伝えている日本画に使われていた絵具は、天然岩絵具として天然の鉱物資源を原料としていた。例えば、緑青、天然群青、辰砂、朱土あるいは方解末、雲母である。天然から作られる絵具は色数が限られ少ないため、彩色手順や下地の工夫、鉱石系の岩絵具は熱を加えたり、酸化還元反応により独特の色相に変化させるなど、様々な方法が利用されて描かれていたものと思われる。
当所は約20年前より、新日本製鉄叶V素材事業部殿と共同でセラミックスカラー鉄蓋の商品化を手がけてきた。開発にあたっては、防食性、耐磨耗性、滑り性等数々の課題をクリアし、多くの市町村で採用されている。しかしながら、セラミックスの溶射皮膜に関する色について、これまで技術的に解析された報告がないため今回、マンセルナンバーによる数値化を行い、色の定量化について検討した。
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色の三属性 |
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現在、我々をとりまく生活環境の中には無数の色が存在するが、色を言葉で表現することは非常に複雑で難しい。
例えば、「赤」、「鮮やかな赤」、「燃えるような赤」などと表現の仕方が人によって異なり、曖昧な答えになる。そこで、色表現の
共通の方法として、色の数値化が確立されている。色を数値化するための要素として「色あい」「明るさ」「鮮やかさ」 の3つがあり、
それぞれの度合いという意味で「色相」、「明度」、「彩度」 と呼ばれている。これら3つの要素を「色の三属性」といい、図−1に示す
ように色相を外周、明度を縦軸、彩度を中心からの軸とした立体として考えることができる。さらに、実際の色を配すると図−2に
示すような立体色になり、彩度の段階が色相と明度ごとにそれぞれ異なるため、色立体は複雑な形を示すが、色相、明度、彩度が
変化していく様子がよくわかる。
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 図−1 色相、明度、彩度の立体図 |
 図−2 色立体 |
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マンセル記号 |
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上記した「色の三属性」でつくられる色立体の色相、明度、彩度それぞれの
段階に記号と番号をつけることで、色を知ることができる。このシステムは
アメリカの画家A.H.マンセルが発案したもので、マンセル表色系と呼ばれ、その
後改良され日本のJIS標準色票として使用されている。
以下にマンセル表色系による三属性の説明を記述する。
(1) 色相(Hue)
赤(R)、黄(Y)、緑(G)、青(B)、紫(P)を基本5色相として、色相環上均等に
配置し、これら色相の中間に黄赤(YR)、黄緑(GY)、青緑(BG)、青紫(PB)、赤紫
(RP)を配置して10色相としている(図−3参照)。色相は色相記号(R、Y、G
など)と等分した数字(1〜10)を組み合わせて表すが、各色相を代表する色は5
(5R、5B、5BGなど)となる。
(2) 明度(Value)
理想的な黒を0、理想的な白を10とし、その間の色を等間隔になるように
分けている。色票化としては最も明るい白=9.5、最も暗い黒=1.5としている。
(3) 彩度(Chroma)
無彩色を0とし、色味が増すにつれて等間隔に彩度の値も増加する。
マンセルの最高彩度は色相によって値が変わる。
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 図−3 マンセル色相環 |
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(4)マンセルの色表示
マンセルの色表示は、 色相 明度/彩度 と表す。例として、「最も鮮やかな赤」をマンセル表示すると、5R4/14 となる。
また、無彩色(白、黒など)の場合は「色の特徴を持たない」という意味から、ニュートラルを示すNをつけて、N5.0(明度)と表す。
以上がマンセル表色系である。また、その他の表色系としてL*a*b表色系、XYZ表色系などがあるが、これらはまだ完全とは言えず、
色彩管理には向いていない。
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セラミックス溶射による着色は溶射材料粉末の成分によって変化することが知られている。例えば、白色系の色調を呈するW-Al2O3、黒色系の色調を呈するAl2O3-TiO2系、青色系の色調を呈するAl2O3-Co系、緑色系の色調を呈する珪酸カルシウム-クロミア系などがあり、材料のブレンド等によってその他の色を 出すことも可能である。このような材料を用いることにより、従来の溶射皮膜特性を兼ね備えた景観用カラーセラミックス溶射皮膜(図−4参照)が得られる。図−5に溶射後および封孔後の皮膜外観を示す。通常、溶射製品は溶射後の封孔処理を必要とするため、封孔後の色彩判定が重要となる。
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 図−4 カラーセラミックス溶射皮膜外観
 図−5 溶射後(下部)及び封孔後(上部)の外観
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上述した色の概念を考慮した上で、当所で現在製造しているカラーセラミックス溶射皮膜全20色の定量化を試みた。
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サンプル作製 |
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50×80×t3.0mm普通鋼板にスチールグリットによるブラスト処理を施した後、
METCO製9MBプラズマ溶射装置を用いて、膜厚200μmのサンプルを作製した。
また、溶射面の半分にアクリル系クリヤー樹脂塗料を用いて、封孔処理を施した。
尚、色のばらつき具合を見るために、各色当り10枚のサンプルを施工日を変えて
作製した。
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マンセル値 |
無 彩 色 |
ホワイト |
N9.0 |
| ライトライトグレー |
N7.0 |
| グレー |
N4.0 |
| ダークグレー |
N3.0 |
| ブラック |
N2.0 |
有 彩 色 |
ライトブルー |
5PB7/6 |
| ブルー |
5PB6/8 |
| ダークブルー |
7.5PB3/10 |
| ライトグリーン |
5G7/2 |
| ニューグリーン |
5G/5/4 |
| ダークグリーン |
5GY5/4 |
| ライトピンク |
10R8/2 |
| ピンク |
7.5R7/3 |
| ライトベージュ |
10YR8/6 |
| ベージュ |
10YR7.5/6 |
| ライトブラウン |
7.5YR7/6 |
| ブラウン |
2.5YR5/6 |
| ダークブラウン |
10YR4/2 |
| ダークブラウンS |
7.5YR5/3 |
| ダークブラウンM |
2.5Y5/3 |
表−1 目視によるマンセル値化
 図−5 色彩色差計
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マクロ色とマンセル値との対応 |
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封孔後の各溶射サンプルのマンセル値を知るため、標準色見本帳(日本塗料
工業会発行)を用いて、目視比較により数値化した。結果を表−1に示す。
表より全ての溶射色の数値化は可能であった。しかしながら、有彩色系の比較に
おいて標準色見本帳の色相値の区切りが2.5刻みとなっており、参照色が少ない
為、有彩色に関してはあくまで見本帳の近似色との対応しかできなかった。一方、
無彩色は明度値(2〜9)のみ比較すればよいことから、容易に数値化できることが
わかった。
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色彩色差計によるマンセル値測定 |
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上記のように、目視によるマンセル値化には限度がある。また、測定者あるいは
測定環境による色の見方にバラツキがあるため、色の定量化方法として、良い手段
とは言えない。そこで、これら問題を解決するための手段として、色彩色差計の
適用を検討した。本装置(図−6参照)はJIS Z-8722定義の拡散照明垂直受光
方式に準拠しており、この照明方式は試料に対して輝度がほぼ均等な光源で
あらゆる方向から照明し、垂直方向の反射光を受光している。通常、色を見る場合、
屋内では複数照明と壁からの反射がある拡散照明条件となっている。屋外では、
天空からの拡散照明条件となり、この方式は現実に近い照明条件といえる。
従って、本器は通常の視覚評価と平均的に最も一致している。
本装置を用いて無彩色系の3色(ホワイト、ブラック、グレー)および有彩色系の3色
(ブルー、ニューグリーン、ブラウン)から測定したマンセル図−7に示す。また、
それぞれの目視マンセル値との比較を行った。図−7より無彩色系の明度は多少
バラツキがあるものの、それぞれの色の傾向がみられた。次に図−7,8,9より
有彩色系についても色の特徴が確認されたが、色相および彩度の値に大きな
バラツキ傾向がみられた。また、目視によるマンセル値との比較においても、
無彩色系はほぼ同等の値となるが、有彩色系では3要素共に一致する色は確認
されなかった。これは有彩色系全15色について言える結果であった。
このように、色彩色差計を用いることにより溶射皮膜のマンセル値化は可能で
あるが、非常にバラツキが大きいことがわかった。
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今回、溶射皮膜の色について色彩色差計による数値化とそのバラツキを
調査した結果、前述したように有彩色のバラツキが大きいことがわかった。
更に客様に満足いただける製造技術を確立する為、改良を行って
いかなければならない。今後、色のバラツキが少ない溶射皮膜をつくり出す
ために、さらに以下の研究課題の実施を考えている。
(1) 皮膜の粗さや封孔処理の影響
(2) 溶射材料組成の影響
(3) 溶射条件の影響
これまで溶射皮膜の色についての技術的解析が行われた
報告がなかったので、研究調査途中の紹介を行いました。
最後に現在当所で保有しているセラミックスカラーの色見本
(図−10)を掲載致します。
参考文献
(1) 色彩と配色(太田昭雄、河原英介著 グラフィック社)
(2) 色彩の常識(池田元太郎著 丸善)
(3) 色のおはなし(川上元郎著 日本規格協会)
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 図−7 無彩色および有彩色の明度値
 図−8 有彩色の色相値
 図−9 有彩色の彩度値
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 図−10 当社保有のセラミックスカラー |
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